臨床コラム 私の国際学会体験記
国際思春期青年期精神医学・心理学会が6月末に開催されました。9月にもこのコラムで,紹介されましたが,私も書きたい,と思います。
私も今年から,クリニックのスタッフになりました。昨年は研修生という立場にいて,皆さんが準備されている様子を見ては,大変そうだなあ,とか,何やら学会があるようだなあ,などと感じながら,ほんの少しだけお手伝いをしているような感じでした。学会の運営などというものは,これまで全くもって無縁でした。私にとって,学会は参加するものであって,運営する側に回るということは想像もできないことだったのです。それだけに学会の運営に携わることができた,ということは,とても新鮮で貴重な体験だったのです。
とは言え,いざ書こうと思うと何について書こうか,と考えても,なかなか思い付かず,思い付いたとしても,なかなか考えをまとめることができず,時間が過ぎてしまいました。考えがまとまらないと段々嫌になってきて,気付けば,このコラムを書くのも,先延ばしにしてしまっていました。「ああ,自分の悪い癖だなあ」と。「そう言えば,学会の時もそんなことがあったっけなあ」と思い出しましたので,ここを取掛りにして書き始めたい,と思います。
クリニックのスタッフも学会で,自分たちの発表をしました。私もポスター発表をすることになりました。ポスター発表では,自分の研究をA0サイズの大きな紙にまとめて書きます。それを掲示して,見に来て下さった方と話す,といったものです。ただ,いざ発表の準備を始めると,何を書けば良いのやら,どのように書けば良いのやら,全く考えがまとまらず,時間だけが過ぎて行ってしまいました。他に発表することになったスタッフは意気揚々と発表を作成していきます。「みんなすごいなあ」「何書いたら良いんだろう?」「全然まとまらないなあ」「こういうの苦手だなあ」「ああ,嫌だなあ」…。先延ばし,先延ばし…。予想されたことですが,学会前日は,当日の運営に関わる大切な仕事も沢山入るので,とても忙しくなりました。そのため,結局ポスターが刷り上がったのは,発表の前日夜遅くでした。「先延ばししちゃあいけないなあ」「早めに取りかからないと」と,あの時は思ったものでした。
運営する側に回ると,他にも色々しなくてはなりませんでした。他の仕事はいくつかあったのですが,その中で私にとって,とても大変だった参加証の作成について書きます。参加証とは,学会に参加される先生方が首につけられる,名札のことです。今回は国際学会である,ということで,英語表記で名前を書かなくてはなりませんでした。すると,先生方のお名前のアルファベットにミスがチラホラ…。スタッフに指摘をされて気付き,「ああ,またやってしまった」「細かい仕事苦手だなあ」などと考えていて,期限のない仕事だったので,気が進まなくなることもありました。それで,少しずつコツコツやれば良いものを,まとめて一気にやってしまう。すると,疲労も手伝って,ミスが増える,ということもあったように思います。
さて,学会に限らず,日常生活においてもですが,何かすると,自分の色々な側面が見えてきました。国際思春期青年期精神医学・心理学会の打ち上げで,私は自分の出来ないこと,苦手なことが分かったので,それについて対策していきたい,と言いました。業務上のミスは比較的対策が打ちやすく,少しずつですが,ケアレスミスは減っているように思います。けれど,嫌なことを先延ばしにしてしまう,ということについては,このコラムを書くことをはじめ,大きく変化していないようです。結果的に私が困るのですが,何故か変わっていません。
このコラムを書きながら,何故自分が結果的に困るのに先延ばししてしまうのだろうか?と疑問に思い,考えると,いくつか考え付くことはあります。自分がミスしているのをあまり見たくなくて,取りかからなければ,ミスしないから,その点では良いのだろうか?など…と。ただ,それは何故だろう?などと色々考えている次第です。運営という面だけではなく,何やら様々なことに思いを巡らせる機会にはなったように思います。こんな風に書いてしまうと,随分大変な思いをしたのだなあ,と見えてしまうかもしれませんが,決して大変だっただけではありません。大変は大変ですが,皆で何かをする,ということはどこか楽しい部分もあったように振り返ると思います。夜遅くまで,クリニックで,役割分担や当日の動き,機材の確認などを話し合うことは,貴重な体験だったようにも感じます。
国際思春期青年期精神医学・心理学会について私なりの記録を書いてみました。ただ,自分で読み返すと,とても個人的なものであって,学会のことについて詳しくお話しできていないように思います。私のコラムに関しては,はじめて運営してみたスタッフの体験記だと思っていただいて,詳細につきましては,過去のコラムをご参照いただければ,幸いです。
(文:川崎俊法)