心理療法(サイコセラピー、カウンセリング)
心理療法は、すなわちカウンセリングではありません。カウンセリングには、相談すること、援助すること、助言すること、といった意味が含まれています。心理療法は、より専門的に、心にあるなんらかの経験や困りごとについて焦点化し、アプローチすることを目指しています。心理療法だとあまり馴染みがないので、あえてカウンセリングと表現することもあります。
心理療法にはじつのところ、数え切れないくらいのさまざまな方法があります。その中でも、とくに精神分析的な理解にもとづく心理療法を精神分析的心理療法と呼んでおり、当オフィスではもっともおこなわれている方法です。
精神分析/精神分析的心理療法
1900年ごろ、ジークムント・フロイトは、無意識を理解し、無意識に迫る方法として、精神分析を創りました。カウチ(寝椅子)に横になって、頭に思い浮かぶことをそのまま言葉にしていく自由連想というやり方が、精神分析(的心理療法)の設定になりました。自分の心に浮かんだことをとりとめなく言葉にしていくことが、次第に、自分を知り、自分の経験をリアルなものに感じることに繋がっていきます。さまざまなできごと、印象、空想、情緒、思考、まだ名付けられていない経験、未知、考えたこともないこと、過去からいま、あらゆることが、どれも心にとって重要なものです。 フロイトのある患者はこの体験を、お話療法と呼びました。これは、お話することによって、すっきりする、楽になる、ということを意味するのではありません。お話をしているうちに何かが起こってくる、ということです。私たちは、この表現こそが、精神分析の、あるいは広く心の治療の本質であると思っています。
さらに英国の独立学派精神分析家ウィニコットは、人生を、そして精神分析を、遊ぶこと(playing)であると見なしました。これは興味深い考えだと思います。私たちはみな、自分の人生という舞台に登壇している演者(プレイヤー playler)なのです。遊ぶときの私たちは、現実のルールを理解しつつ、熱中して我を忘れることのあいだにいます。映画や演劇は、どれもフィクションです。でも「こんなのフィクションだ」と言ってしまうと、とたんに味気ないものになり、せっかく楽しみにしていた気持ちも、萎んでしまいます。私たちはフィクションだとわかりながら、真剣にそれを観て、そして同時に楽しんでいるのです。辛い映画でも「この映画はフィクションです」という最後の一文によって、私たちは現実に戻ってくることができます。それが遊びであり、現実と空想のあいだで生きることなのです。言い換えると、遊び半分で生きていることがほどよい生き方である、とも言えるでしょう。
もう少し詳しくお話をしてみると、心理療法の中で、治療者が相談に来た人のお話を受けて、何かを言うことがあります。それは無意識を刺激するための触媒としての言葉であって、みなさんになにかを理解させたり、解決させたり、矯正させたり、けちをつけたりするためのものではありません。それによって、気持ちや行動や人間関係が変わることがあるかもしれませんが、変わることはひとつの過程であり、目標ではありません。もし治療者の言葉を刺激にしてなにかが起こったのならば、それを起こしたのはみなさんの中にある創造性なのであり、目標があるとすれば、この創造性によって自らの人生を生きられるようになること、それがつまり、遊べるようになるということです。
ウィニコットは、そうした創造性が、私たちの本当の自己の動きによって生じると語りました。この本当の自己という言葉は、単純な意味での「本当の自分」を意味しているわけではありません。それは、自分なりの人生を創り上げていくことに潜んでいる心の核であり、誰にもけっして触れることができないものなのです。しかし精神分析は、直接この本当の自己に触れられないとしても、その現われとしての生き方や人生そのものの苦悩に、治療的な関係を通してコミットすることができる遊び場なのです。そしてウィニコットは、私たちが間違うことによってでしかみなさんのお役には立てないこと、しかしこの間違いが、治療の中に新しい理解や遊びをもたらすことがあることを、後世に伝えました。私たちはこの考えを足がかりに、心という深遠な現象に取り組んでいるつもりです。
このように私たちは、遊ぶようにお話する体験(精神分析)を、提供したいと思っています。そしてどのようなものであれ、みなさんが自分の人生を創造し、遊んでいくことに貢献したいと願っています。それが、私たちが大事にしている精神分析の理念です。 この不思議なお話の時間を通して、自分自身に触れる経験を重ねることが、きっと役に立つだろうと思います。
子どもへの精神分析的心理療法、治療相談面接、親面接
当オフィスでは、子どもへの精神分析的心理療法や治療相談面接をおこなっています。子どもの精神分析的心理療法とは、お子さんと治療者が一対一でプレイルームで過ごす中で、遊びを通して無意識を表現してもらって、心のわだかまりや不安、葛藤などに触れて、より自分らしさに近づいていく方法です。治療相談面接は、お子さんと治療者が一緒に過ごしていることは同じですが、主には、お互いになぐり書きした描線から連想した絵を描いていくというスクィグル・ゲームを通して、お子さんの無意識の経験に近づいていく方法です。
親面接は、お子さんについて相談したい保護者の方への面接です。お子さんがなんらかの理由で来談できない場合、お子さんが当オフィス、あるいはべつの場所で支援を受けている場合など、さまざまな状況でおこなわれることがあります。親面接では専門的な観点からお話を伺い、状況の整理、お子さんの心の状態や家族関係の見立て、必要と思われる助言などをおこないます。こうした親面接を経て、保護者の方ご自身に焦点を合わせた心理療法に移行することもよくあります。
料金について
心理療法、精神分析/精神分析的心理療法、子どもへの心理療法、治療相談面接、親面接、いずれも自費になります。
担当者の経験や年数、セッションの頻度、希望の時間帯などによって、料金には幅があります。
当オフィスの相場としては、1回6,600〜11,000円ほどですが、条件によって変わることがあります。
なお、精神分析は週に4〜5回の頻度を持つ場合を指し、精神分析的心理療法はそれより少ない頻度である場合を指す、という考え方もあります。その分け方でいえば、当オフィスでもっともおこなわれているのは、精神分析的心理療法です。そこで得られる経験がどのように違うか、あるいは同じであるかということには、いくつもの考え方があります。
まずは「インテーク面接」をおこなっていきます。
(お問い合わせに一連の流れを掲載しております)
心理検査
心理検査は、心のアセスメントをおこなう中で用いられるひとつの方法です。当オフィスでは、心の状態や知的能力を理解するために、心理検査によるアセスメントも活用しています。心理検査は、決まった道具や手順によって得られたデータを分析し、心や精神や能力のある側面について調べるものです。心理検査の結果を通して、自分のことについての見通しや理解を持つことができます。
心理検査にはいくつかの種類があり、目的によっていくつかの検査を組み合わせておこなうことが一般的です(テスト・バッテリーと言います)。
心理検査はいずれも自費になります。料金の目安は以下のとおりです。あらかじめどのような検査をおこなうかは、プランを共有してからの実施となります。
なお、心理検査のみのご提供は、おこなっておりません。
- 知能検査
- 11,000円
- ロールシャッハ・テスト
- 8,800円
- ほか心理検査全般
- 5,500円
- フィードバック面接
- 5,500円
- 検査結果文書のお持ち帰り
- 5,500円
オンラインでのカウンセリング
当オフィスでは、提携先のたちメンタルクリニックが契約している株式会社MEDLYのオンラインシステム「CLINICS」を使用して、オンライン・カウンセリングができる状況を整えています。ご自宅にいながら、PCやスマートフォンを通してカウンセリングをおこないます。現代のライフスタイルにおけるニーズの増加に対応して、2019年より導入しました。
ただし利用にはいくつか条件があります。
- たちメンタルクリニックでの診察によって、オンライン・カウンセリングが可能だと判断された場合。
- 最低3ヶ月に一度、たちメンタルクリニックでの対面による医師との診察および心理士のカウンセリングが受けられること。
- お支払いがクレジットカードによる決済であること。
- PCかスマートフォンをお持ちであること。
詳しくは、下記掲載の資料をご覧いただくか、当オフィスにお問い合わせください。
ただしオンラインは、対面の代替的方法です。そのため、料金が対面時よりも高くなっています。
また当オフィスでは、オンライン・カウンセリングのみのご提供はしておりません。